岡山地方裁判所 平成元年(ワ)455号 判決 1991年12月19日
原告
小山佳伸
被告
高森善徳
ほか一名
主文
一 被告高森善徳は原告に対し一五万五〇〇〇円及びこれに対する平成元年六月二一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは原告に対し別紙自動車目録記載の自動車を引き渡せ。
三 被告らは各自原告に対し一九万七六七〇円及びこれに対する平成元年九月一四日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告の被告飯間勉に対する別紙交通事故目録記載の交通事故による四九万四四七二円の損害賠償債務は存在しないことを確認する。
五 訴訟費用は被告らの負担とする。
六 この判決の第一ないし第三項は仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
(原告)
主文第一ないし第五項同旨並びに第一ないし第三項について仮執行宣言告
(被告ら)
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
第二主張
(請求の原因)
一 別紙交通事故目録記載の交通事故が発生した。
二 原告は原告車を運転して市道を北進してきたが、交差点で左折する予定であつたので、 交差点手前で停止していたところへ、被告高森運転の被告車が後方から原告車の右側を通過して原告車の前に出て交差点を左折しようとして、原告車の右前部に被告車の左前部を衝突させたものであり、本件事故は被告高森の一方的過失によつて発生したものである。
三 原告は原告車の修理に一五万五〇〇〇円を要し、同額の損害を受けた。
四 原告は被告らから暴力団の威圧を背景とした要求を受け、しかたなく、平成元年六月二二日株式会社トヨタレンタリース岡山から別紙自動車目録記載の自動車(以下本件自動車という。)を借り受けて被告らに対し被告車修理期間中の代替車として引き渡し貸与した。右本件自動車引き渡しは、本件事故責任が被告ら側にある場合には、被告ら各自が料金を負担する黙示の合意によるものである。被告らは被告車の修理が完了したにもかかわらず、本件自動車の引き渡しをしないところ(なお、原告は平成元年七月二〇日岡山地方裁判所平成元年(ヨ)第二四一号仮処分決定によつて被告らから本件自動車の仮の引き渡しを受けている。)、原告は平成元年九月一一日前記会社に対し本件自動車の平成元年六月二二日から同年七月二〇日までのレンタル料金一九万七六七〇円を支払つたから、被告らは各自前記合意によつて右金額の支払義務があり、仮に右合意がなかつたとしても、被告らは右金額を不当利得している。
五 被告飯間は原告に対し被告車の修理費用の損害二四万三六九〇円、評価損七万三一〇七円、代車料金一七万七六七五円の合計四九万四四七二円の損害賠償債権が存在する旨主張している。
六 よつて、原告は請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。
(請求の原因に対する認否)
一 請求原因第一項は認める。
二 同第二項については、被告高森の過失は否認する。
本件事故は、左折中の被告車に、被告車の左側に停止していた原告車が右側の安全確認をしないで発進して発生したものであり、原告の過失によつて発生したものである。
三 同第三項の損害は認める。
四 同第四項については、原告は平成元年六月二二日株式会社トヨタレンタリース岡山から本件自動車を借り受けて被告らに対し被告車修理期間中の代替車として引き渡したこと、被告らは被告車の修理が完了したにもかかわらず、本件自動車の返還をしなかつたこと、原告は平成元年九月一一日前記会社に対し本件自動車の平成元年六月二二日から同年七月二〇日までのレンタル料金一九万七六七〇円を支払つたこと、以上の事実は認めるが、その余は争う。
五 同第五項は認める。
(抗弁)
一 本件事故は、前記のように原告の過失によつて発生したものである。仮に被告高森にも過失があつたとしても、被告高森の損害賠償額の算定には原告の過失が斟酌されるべきである。
二 原告主張のレンタル料金は、原告と被告らの間で原告が負担する旨の合意がなされていたものである。なお、本件自動車は原告主張の仮処分によつて引き渡し済みである。
三 被告飯間は原告に対し被告車の修理費用の損害二四万三六九〇円、評価損七万三一〇七円、代車料金一七万七六七五円の合計四九万四四七二円の損害賠償債権を有するものである。
(抗弁に対する認否)
いずれも否認する。なお、被告車の修理費用の額は認めるが、原告に過失はないから、損害賠償責任もない。
第三証拠
本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりである。
理由
一 平成元年六月二一日午後八時五〇分頃岡山市福富中一丁目三番二七号先国道上において、被告高森運転の被告飯間所有の被告車と原告運転の原告所有の原告車が衝突し、原告車及び被告車が破損したことは当事者間に争いがない。
二 証拠(甲三、一五ないし一九、証人高橋正泰、原告、被告高森善徳、但し、以下の認定に反する部分は措信できない。)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
1 本件事故現場は東西に通じる国道二号線(三車線)に南方からの市道(車道幅員は約四メートルであるが、国道二号線に接続する部分は扇形に広がつている。)が交差する交通整理の行われていない交差点付近である。交通規制は、市道から国道に進入するときに一時停止がある。
2 原告は原告車を運転して市道を北進してきたが、右交差点で左折する予定であつたので、左折の合図をしながら交差点手前の前記一時停止の路面表示を少し越えた地点付近で停止し、国道の東方からの進行車両に注意していたところへ、被告高森運転の被告車が後方から原告車の右側を通過して原告車の前に出て交差点を左折しようとしたが、国道の東方からの進行車両に気付いて、あわてて、左に転把し、原告車の右前部に被告車の左前部を衝突させた。
右認定事実によると本件事故は被告高森の一方的過失によつて発生したものであり、原告にはなんら過失はないものと認められる。なお、付言すれば、被告高森は、被告車が原告車の右前方を左折していたところ、原告車が被告車の左後方から被告車より高速で進行してきて、原告車の右前部を被告車の左前部に衝突させた旨供述しているが、甲第一六ないし第一九号証、証人高橋正泰の証言と原告本人尋問の結果によると、本件事故後の原告車の右前部には後方から前方に向かつて力が加わつた損傷痕があり、被告車の左前部には前方から後方に力が加わつた損傷痕があつたことから、被告車が原告車の右後方から時速約二〇キロメートルで進行してきて原告車に衝突したことが認められることからすれば、到底措信できないところである。
三 原告が原告車の修理費用一五万五〇〇〇円の損害を受けたことは当事者間に争いがないから、被告高森は原告に対し右損害一五万五〇〇〇円及びこれに対する本件不法行為の日である平成元年六月二一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
四 原告は平成元年六月二二日株式会社トヨタレンタリース岡山から本件自動車を借り受けて被告らに対し被告車修理期間中の代替車として引き渡したこと、被告らは被告車の修理が完了したにもかかわらず、本件自動車の返還をしなかつたこと、原告は平成元年九月一一日前記会社に対し本件自動車の平成元年六月二二日から同年七月二〇日までのレンタル料金一九万七六七〇円を支払つたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。
そうすると、被告らは各自原告に対し本件自動車の引き渡し義務があることは明らかである。なお、原告は平成元年七月二〇日岡山地方裁判所平成元年(ヨ)第二四一号仮処分決定によつて被告らから本件自動車の仮の引き渡しを受けていることは当事者間に争いがないが、右は本案訴訟における被告らの右本件自動車引き渡し義務には影響しなかことはいうまでもない。
次に原告の前記レンタル料金相当額請求について更に検討する。
被告らは右レンタル料金については、被告らと原告の間で原告が負担する旨の合意がなされた旨主張するが、右主張事実を認めるに足る証拠はない。しかして、本件事故が前記のとおり被告高森の過失によつて発生した以上、特別の事情のない限り、被告らは各自原告に対し前記レンタル料金を支払う旨約していたものと認めるのが相当であり、被告らは各自原告に対し右レンタル料金一九万七六七〇円及びこれに対する前記原告の弁済後である平成元年九月一四日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
五 被告飯間は原告に対し被告車の修理費用の損害二四万三六九〇円、評価損七万三一〇七円、代車料金一七万七六七五円の合計四九万四四七二円の損害賠償債権が存在する旨主張していることは当事者間に争いがないが、前記のとおり本件事故について原告に過失がない以上、右損害賠償債権が存在しないことは明らかである。
六 以上の次第で、原告の請求は、全部理由があるから認容することとし、民訴法八九条、九三条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 梶本俊明)
交通事故目録
平成元年六月二一日午後八時五〇分頃岡山市福富中一丁目三番二七号先国道上において、被告高森運転の被告飯間所有の普通乗用自動車(岡三三に八七八四、以下被告車という。)と原告運転の原告所有の普通乗用自動車(岡五八む四九六七、以下原告車という。)が衝突し、双方の自動車は破損した。
自動車目録
登録番号 岡山五五わ二九五一
登録年月日 昭和六三年七月二一日
種別・用途等 小型乗用自家用
型式・形状 E―GS一三一・箱型
車名 トヨタ
車台番号 GS一三一―〇七〇一五五
原動機の型式 一G